スマホアプリの活用で
広がる可能性。
前例のない製品を生み出す、
手探りの挑戦。

PROJECT MEMBER

  • 藤田 雅之

    藤田 雅之

    設計
    2011年入社

  • 稲垣 裕大

    稲垣 裕大

    設計
    2014年入社

  • 横山 広大

    横山 広大

    マーケティング
    2017年入社

ITの進化に対応する製品開発。

ITの進化に対応する
製品開発。

ITの進化が今、暮らしや産業の課題解決にさまざまな形で活かされている。一つの方向性が、製造現場などで進むIoT(モノのインターネット)化だ。生産設備のIoT化が進むと、離れた場所にいながら設備の稼働率などのデータを取得でき、より有効な情報活用が可能になる。そうした流れが各分野で広がる中、川本製作所もまた、ポンプのIoT化に取り組んでいる。スマートフォンを使ってポンプの運転状態を確認できる無線通信対応アプリ「KAWAMOTO i」をリリースした。
「KAWAMOTO i」誕生の背景にあるのが、製品のメンテナンスに関する課題だ。ポンプ機器は納入後10年程度稼働し続けるため、メンテナンスの際は過去の時代から現在までの多種多様な製品知識が求められる。日本の人口減少に伴い設備管理者やメンテナンス業者の減少が進む中、管理の難しさを解消することが大きな課題となっていた。また、これまではビルやマンションに設置されたポンプをメンテナンスする際、その都度ポンプのカバーを外して状態確認をする必要があった。狭い現場でそれを行う手間は大きく、設備管理者やメンテ担当者の負担になっていた。
そうした中で、将来的には製品知識を問わず誰でも直感的にポンプの状態を理解でき、マニュアルを不要とする仕組みづくりが必要であると、マーケティング部は判断した。IoTを活用することで課題を解決できると考え、創業以来初となるスマホアプリの開発に踏み切った。
「いつまでもアナログな体制では時代に取り残されていきます。将来を見据え、ポンプにもIoT技術を取り入れていく必要があります。ではどんな機能が必要で、どんなシステムを構築すれば良いか。また、どんな価格なら市場に受け入れられるのか。そうした市場の調査・分析を行い、仕様を固めていきました」
と話すのが、マーケティング部の横山広大だ。若く意欲旺盛な人材として期待され、プロジェクトの旗振り役を担うことになった。

手探りで開発を進めた技術者たち。

手探りで開発を進めた
技術者たち。

マーケティング部の調査・分析結果を受け、製品設計を行ったのが、技術部の藤田雅之と稲垣裕大だ。2人は入社以来、ポンプの制御盤の設計を担ってきた電気系の技術者である。その経験を活かし、「KAWAMOTO i」を構成する電子部品やスマホアプリの設計を担うことになったが、それまでアプリ開発を手がけたことはなくゼロからのスタートとなった。
「『どういうものをつくればいいか』というコンセプトの発案からアプリの開発、試作品の評価、その後の運用の管理など、一連の開発業務を行いました。しかし、スマホアプリを作った経験はなく、会社としても初めての試みでした」
と藤田は振り返る。開発初期段階でのハードルの一つが、通信規格の選定業務だ。「無線通信」とひと口に言っても、多種多様な規格が存在し、それぞれ特徴やコストが異なる。それらを比較して一つに絞るのは、予想以上に困難な作業だった。さまざまな規格を検討し、最終的に選定したのがBluetooth(R)という無線通信規格である。
また、アプリ開発を一緒に行う協力会社選びの苦労も大きく、品質(特に、ポンプの製品寿命に対応できること)に対する考え方を共有できるパ-トナーを見つけるために多くのメーカーから話を聞いた。
藤田と稲垣は、アプリの仕様を考えたりデザインしたりする業務を自社で行う方法を選んだ。しかし2人ともデザインの経験があるわけではない。スケッチブックに絵を描くところから始め、試行錯誤しながらデザインを進めていった。当時の状況を稲垣はこう話す。
「学校に通わせてもらいスマホアプリのつくり方を学ぶところから始めました。課題に対してフットワーク軽く対応できる環境が川本製作所にはあり、新しい試みが困難であることにも深い理解があります。他の多くの部署の協力もいただくなど、体制の充実ぶりを実感しました」

F.V.I.精神が発揮されたプロジェクト。

F.V.I.精神が発揮された
プロジェクト。

今まで手がけたことのない技術でも、必要であれば柔軟に取り入れる。また、その際に新たな教育が必要であればバックアップは惜しまない。そうした姿勢は、川本製作所が培ってきたF.V.I.(Frontier spirit Vitality Innovation)精神の表れだといえる。
通信機能を搭載したポンプを製品化するためには、新たな生産設備の構築や検査方法の整備など、さまざまな部署の協力が必要だ。品質面や価格面などの課題をクリアするために、各部署の協力を得ながら体制づくりを進めていった。さらに、リリースされた製品の運用方法や販売方法を営業部門に周知していくことも、プロジェクト成功に欠かせないポイントである。全国各地の支店に所属するマーケティング担当者と連携して製品情報を展開していく役割を横山が担った。
「アプリを搭載した製品を突然市場に出しても、設備の管理やメンテナンスする人は扱い方が分かりません。全国各地の支店にいるマーケティングや営業の担当者に情報を展開していきました」
こうしていくつものプロセスを経てリリースされたのが、業界で初めてBluetooth(R)通信機能をポンプ制御盤に搭載した「KAWAMOTO i」である。最大の特徴は、スマホアプリをダウンロードするだけで、ポンプカバーがついたままでもポンプの運転情報を手軽に確認できること。消費電力や故障情報、受水槽の状態などを伝える報告書も、アプリ上で簡単に作成できる。また、メンテナンス担当者に十分な製品知識がなくても、現場で確認した情報をメールで送れば、離れた場所にいる人がデータを見て状況を分析し、対応を指示することができる。現場確認の手戻りが減り、人員やコストの削減につながるなど、大きなメリットが期待できるのだ。

製品開発のすべてを手がける喜び。

製品開発のすべてを
手がける喜び。

こうして進められた「KAWAMOTO i」の開発プロジェクト。メンバーの重圧は相当なものであったと想像できるが、その反面得られる手応えも大きなものだった。藤田は言う。
「ゼロの状態から最初の1を生み出し、胸を張って『自分たちが作った』と言える。そういう仕事に携わることができ、喜びを感じています。一人ひとりに任される仕事の裁量が大きく、業務が細分化されていないので、プロジェクト全体に携わることができます。製品の企画から携わりたい人や、製品が世に出るところまで関わりたい人には、とても良い会社だと思います」
さらに稲垣もこう言葉を続ける。
「私はこのプロジェクトで、一般的な設計の範囲を超えた業務まで経験することができました。もちろん苦労はありましたが、一人の技術者として純粋に感じたのは、未知のことに挑戦する面白さです。スキルアップの喜びを感じます」
現在、「KAWAMOTO i」が搭載されたポンプは各支店・営業所で販売が進められている。
製品がリリースされた時、全国の営業担当者の反応をいち早く聞いたのが、マーケティング部の横山である。
「社内で常に言われているのが、『業界初をめざす』『他社とは違う製品特長を出す』という言葉です。それを今回実現でき、営業担当者からも、『うちの会社がこんなことをできるようになったんだ』『ここまで進化したのか』という喜びの声を多く聞きました。プロジェクトの価値を確認できたのと同時に『もっと驚かせてやろう』というモチベーションが湧きました」
「KAWAMOTO i」のリリースによって、製品のIT化に対する社内の期待感はますます高まっているという。製品の進化や使い勝手の向上をめざし、現在もプロジェクトは継続されている。